公益社団法人北九州市八幡医師会会長の穴井 堅能です。八幡医師会は平成29年3月で創立100周年を迎える伝統ある医師会です。会員数は平成28年7月末現在でA会員273名、B会員256名、計529名です。
我々の使命は地域医療を守ること、すなわち地域住民の生命・健康を守っていくことだと考えております。
救急医療、住民検診、学校検診、予防接種、来たるべき超高齢者社会を目の前にして在宅医療を中心とした地域包括ケアシステムの構築、介護認定審査会など幅広く地域医療の支援を行っています。
その一環として看護人員の確保と優秀な看護師育成を目的として八幡医師会看護専門学院を運営しています。平成29年度よりレギュラーコースを新設し、准看護師科と供に看護学生の教育・育成を行っています。
また、地域包括ケアの中核となる質の高い医療・介護を行うために八幡医師会医療・福祉センターを運営しています。
八幡医師会介護保険総合センターでは様々な介護に関する相談や支援を行っており、八幡医師会訪問看護ステーションでは在宅医療と連携し、在宅の患者さんのケアを行っています。
平成27年6月から北九州市の委託事業で行っている八幡在宅医療・介護連携支援センターでは、在宅医療を行っている医師や病院との連携・調整や、多職種連携の調整、退院時支援の相談など幅広い活動を行っています。
また、八幡の各基幹病院と連携、協力しながら地域医療構想の調整や策定することも重要な責務だと考えております。
最後に、八幡医師会では役員に、医師会員を含めた医療従事者の代表であるという自覚を持ってもらうと供に、高い理念を持ってもらえるように、日本医師会の「医の倫理綱領」を、理事会時に役員全員で唱和をしています。
以下に内容を御紹介しておきます。
医学および医療は、病める人の治療はもとより、人びとの健康の維持もしくは増進を図るもので、医師は責任の重大性を認識し、人類愛を基にすべての人に奉仕するものである。
- 医師は生涯学習の精神を保ち、つねに医学の知識と技術の習得に努めるとともに、その進歩・発展に尽くす。
- 医師はこの職業の尊厳と責任を自覚し、教養を深め、人格を高めるように心掛ける。
- 医師は医療を受ける人びとの人格を尊重し、やさしい心で接するとともに、医療内容についてよく説明し、信頼を得るように努める。
- 医師は互いに尊敬し、医療関係者と協力して医療に尽くす。
- 医師は医療の公共性を重んじ、医療を通じて社会の発展に尽くすとともに、法規範の遵守および法秩序の形成に努める。
- 医師は医業にあたって営利を目的としない。
- 救急医療を中心とする地域医療提供体制の再構築
- 医療機関や市民に対する広報を充実させ、無用不急の救急受診を減らすことにより救急医療担当者の負担軽減を目指す。また、二次救急医療を担当する救急告示病院及び行政との連携を強化し、市民が安心のできる救急医療体制を構築する。
- 災害医療への取り組み
- 災害時に医師会として地域で医療活動等を実施する体制を整え、技術を修得するため、八幡地区及び周辺の戸畑区、若松区、遠賀・中間地区で三師会が連携する災害時医療救護訓練・研修会を実施するとともに、災害時、緊急時の連絡網を構築する。また研修会においては、実際に被災地で活動した医師や救急隊による講演や指導を企画し、より現場に近い内容を学べるようにする。
- 勤務医・研修医との連携強化
- 大学医局に所属していない勤務医・研修医が半数を占める現在、生涯学習および地域医療連携の手段として医師会への所属を促し、八幡が彼らの第二の故郷となるべく地域全体で育成に取り組む。
また、平成21年に立ち上げた八幡医師会臨床研修医懇話会、超音波研修会を更に発展・充実させるとともに、勤務医に対して医師会が開催する研修会への参加を引き続き積極的に働きかける。 - 在宅医療・連携支援センターの強化
- 地域包括ケア推進のために、在宅医療・連携支援センターの機能を強化して八幡医師会訪問看護ステーションと協力し、病院と診療所の連携のために中心的な役割を担う。そのために多職種が連携して在宅医療の推進できるように邁進する。
- 新生児・乳幼児虐待への対応
- 死亡事例の8割以上を占める新生児、乳児および幼児への虐待を未然に防ぐため、周産期から産婦人科医・小児科医・精神科医が、行政と連携をとりながら、実効的な活動・方法等の検討を行う。さらに保育園、幼稚園とも連携の上、養育者の育児ストレスを早期に発見し解決の方法を検討するためのネットワークを構築する。
- 精神保健対策の推進
- 平成25年度に立ち上げた八幡精神科医会を軸として、産業医との連携並びに自殺対策として一般医との連携を図るため、産業医との合同研修会、一般医との懇談会、その他地域の他職種との連携事業などを実施する。かかりつけ医と精神科専門医の相互理解を深め、精神科患者の紹介等をより緊密にし、また、かかりつけ医の精神科疾患への対応能力強化を図るために合同カンファランス等の開催を企画する。
- 広報活動の推進
- 対内広報の充実を図るとともに、市民に医師会活動を理解していただくため対外広報誌の発行を昨年に引き続き検討する。また、ペーパーレスの時代に対応するために、ホームページの充実を目指す。
- 次代の医師会を支える人材の育成
- 医療は適切な医療制度なくしては出来ないことに鑑み、医療制度改革に関する理解を深めるために各種委員会、地区委員会、地区常会で討論を行い、次代の医師会を担う人材が育つ土壌を形成する。また、各種委員会への参加を医師会会員へ広く求め、会員のさまざまな意見をくみ上げる場を設ける。
- 八幡医師会(医師・医療従事者)無料職業紹介事業の推進
- 会員医療機関の医療従事者確保のために、平成21年5月に新設した八幡医師会無料職業紹介事業を推進する。
- 看護専門学院の将来検討
- 八幡医師会看護専門学院の准看護師科を継続し、現在新設中である看護師科3年課程(レギュラーコース)を2019年4月に開講させるために、教員の確保及び学習環境の整備を行い、医師会および会員が一体になって看護専門学院の安定した運営を行う。医師会が看護師を育成することにより、地域医療の看護体制を維持し、地域医療の基盤を支える。
- 医療・福祉センターが持つ在宅医療部門の強化
- 地域における医療・介護ニーズの高まりを受け、小児から高齢者を対象に訪問看護を実施し、さらに居宅介護支援・介護予防支援を強化し地域包括ケアシステムの構築を目指す。
- 八幡地区の医療供給体制の強化
- 八幡には多数の基幹病院があり、八幡医師会会員医療機関と連携をとりながら高度な医療を提供してきた。平成29年には旧尾倉小学校跡地に北九州市立八幡病院が新築移転する予定であるし、今年4月には北九州市立総合療育センター西部分所が青葉一丁目に開所する。現在でも人幡は医療供給体制として恵まれた地域であると考えているが、今後も身体の不自由な高齢者や障害を持つ児童とその家族が今以上に安心して暮らして行ける街にするために、地域包括ケアシステムの完成とより良い医療の提供体制確立を目指して行く。そのためにも、八幡医師会と行政・基幹病院との連携を持続し一層強化する。
- 八幡医師会100周年記念事業の開催
- 2017年3月に八幡医師会は創立100周年を迎える。
過去の人幡医師会の歩みを再確認し、今後も医師会員の力を結集し地域医療を支える医師会として過進していけるように、未来への展望を考え、医師会として進むべき目標を定める。過去の会員の足跡を検証するために100周年記念誌を発行する。2017年3月18日に創立100周年記念行事を開催し、次の百年に向かって行く意識を会員全員で共有する。 - 福岡県医師会診療情報ネットワーク (愛称;とびうめネット) の拡充
- 地域医療を充実させるためには医療連携が重要となる。そこで、福岡県医師会診療情報ネットワーク(愛称: とびうめネット)への会員の参加を促進し、救急医療の現場での患者情報へのアクセス、医療機関との連携の簡易化を目指す。多数の医療機関に参加を求めるためには、システム導入の簡便化、患者情報入力・更新の簡易化が必須であり、その改革を推進するために、北九州市医師会と協力し福岡県医師会へ強く働きかける。