「小児マヒ」と呼ばれ、わが国でも1960年代前半までは流行を繰り返していましたが、予防接種の効果で現在は国内での自然感染は報告されておりません。
ポリオウイルスが感染すると100人中5〜10人は、カゼ様の症状を呈し発熱、頭痛、おう吐(おうと)があらわれます。また、約1000〜2000人に1人の割合で手足の麻痺を起こします。一部にはその麻痺が永久に残ります。呼吸困難により死亡することもあります。
現在でもパキスタン、アフガニスタンなどでポリオの発生がありますから、日本にポリオウィルスが入ってくる可能性もあります。予防にはワクチンを飲んで免疫をつけましょう。
ジフテリア菌の飛沫感染でおこります。
1981年にジフテリア・百日せき・破傷風(DPT)ワクチンが導入されて、現在では患者発生数は年間0〜1人程度ですが、ジフテリアは感染しても10%程度の人が症状がでるだけで、残りの人は症状が出ない、保菌者となり、その人を通じて感染することもあります。
感染は主にのどですが、鼻にも感染します。症状は高熱、のどの痛み、犬吠様の咳、嘔吐(おうと)などで、偽膜と呼ばれる膜ができて窒息死することがある恐ろしい病気です。発病2〜3週間後には菌の出す毒素によって心筋障害や神経麻痺をおこすことがあります。
百日せき菌の飛沫感染でおこります。
1948年から百日せきワクチンの接種がはじまって以来、患者数は減少してきています。最近、長引くせきを特徴とする思春期、成人の百日せきがみられ、乳幼児への感染源となり重症化する例があります。百日せきは普通のカゼのような症状で始まります。続いてせきがひどくなり、顔をまっ赤にして連続性にせき込むようになります。
せきのあとに急に息を吸い込むので、笛を吹くような音が出ます。熱は出ません。乳幼児は咳で呼吸ができず、くちびるが青くなったり(チアノーゼ)やけいれんが起きることがあります。
肺炎や脳症などの重い合併症を起こします。乳児では命を落とすこともあります。
破傷風はヒトからヒトへ感染するのではなく、土の中にひそんでいて傷口からヒトへ感染します。傷口から菌が入り体の中で増えますと、菌の出す毒素のために、口が開かなくなったり、けいれんをおこしたり、死亡することもあります。患者の半数は自分や周りのヒトでは気がつかない程度の軽い刺傷が原因です。日本中どこでも土中に菌はいますので、感染する機会はあります。また、お母さんが抵抗力(免疫)を持っていれば出産時に新生児が破傷風にかかるのを防ぐことができます。
麻しんウィルスの空気感染によって起こる病気です。感染力が強く、予防接種を受けないと、多くの人がかかる病気です。発熱・せき・鼻汁・めやに・発しんを主症状とします。最初3〜4日は38℃前後の熱で、一時おさまりかけたかと思うとまた39℃〜40℃の高熱と発しんが出てきます。高熱は3〜4日で解熱し、次第に発しんも消失します。しばらく色素沈着が残ります。
主な合併症としては、気管支炎、肺炎、中耳炎、脳炎があります。患者100人中、中耳炎は7〜9人、肺炎は1〜6人に合併します。脳炎は1000人に1〜2人の割合で発生がみられます。また、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という慢性に経過する脳炎は約10万例に1〜2例発生します。また、麻しん(はしか)にかかった人は数千人1人の割合で死亡します。
日本脳炎ウイルスの感染で起こります。ヒトから直接ではなくブタの体中で増えたウイルスが蚊(カ)によって媒介され感染します。7〜10日の潜伏期間の後、高熱・頭痛・嘔吐(おうと)・意識障害・けいれんなどの症状を示す急性脳炎になります。
流行は西日本地域が中心ですが、ウイルスは北海道など一部を除く日本全体に分布しています。飼育されているブタでの流行は毎年6月から10月まで続きますが、この間に80%以上のブタが感染しています。以前は小児・学童に発生していましたが、予防接種の普及などで減少し、最近では予防接種を受けていない高齢者を中心に患者が発生しています。
感染者のうち100〜1000人に1人が脳炎を発症します。脳炎のほか髄膜炎や夏かぜ様の症状で終わる人もいます。脳炎にかかった時の死亡率は約20〜40%ですが、神経の後遺症を残す人が多くいます。
結核菌の感染で起こります。わが国の結核はかなり減少しましたが、まだ2万人を越える患者が毎年発生しており、大人から子どもへ感染することも少なくありません。また結核に対する抵抗力はお母さんからもらうことができませんので、生まれたばかりの赤ちゃんもかかる心配があります。乳幼児は結核に対する抵抗力が弱いので、全身性の結核症にかかったり、結核性髄膜炎になることもあり、重い後遺症を残す可能性があります。BCGワクチンは、髄膜炎や粟粒結核など重傷になりやすい乳幼児期の結核を防ぐ効果が確認されています。
風しんウイルスの飛沫感染によって起こる病気です。潜伏期間は2〜3週間です。軽いカゼ症状から始まり、発しん・発熱・後頸部リンパ節腫張などが主症状です。そのほか眼球結膜の充血もみられます。発しんも熱も約3日間で治りますので「三日ばしか」とも呼ばれることがあります。合併症として、関節痛・血小板減少性紫斑病・脳炎などが報告されています。血小板減少性紫斑病は患者3000人に1人、脳炎は患者6000人に1人くらいです。
大人になってからかかると重症になります。
妊婦が妊娠早期にかかりますと、先天性風しん症候群と呼ばれる病気により、心臓病・白内障・聴力障害などの障害をもった児が生まれる可能性が高くなります。
インフルエンザ菌特にb型は、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎などの表在性感染症の他、髄膜炎、敗血症、肺炎などの重篤な深部(全身)感染症を起こす乳幼児の重篤な病原細菌です。Hibによる髄膜炎は5歳未満人口10万対7.1〜8.3とされ、年間約400人が発症し、約11%が予後不良と推定されています。生後4ヶ月〜1歳までの乳児が過半数を占めています。
肺炎球菌は、細菌による子どもの感染症の二大原因のひとつです。この菌は子どもの多くが鼻の奥に保菌していて、ときに細菌性髄膜炎、菌血症、肺炎、副鼻腔炎、中耳炎といった病気を起こします。
肺炎球菌による化膿性髄膜炎の罹患率は5歳未満人口10万対2.6〜2.9とされ、年間150人前後が発症していると推定されます。死亡率や後遺症例(水頭症、難聴、精神発達遅滞など)はHib(ヒブ)による髄膜炎より高く、約21%が予後不良とされています。
子宮頸がんは、発がん性のヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの持続的な感染が原因となって発症します。性交経験がある女性であれば誰でも感染する可能性があります。
100種類以上の遺伝子型があるHPVの中で、とくに発がんが高いタイプ(16型、18型)の感染が問題となります。近年、20〜40歳代の子宮頸がんは増加傾向にあります。子宮頸がんの約70%は、HPV16,18型感染が原因とされています。
HPVに感染してもほとんどの場合、ウイルスは自然に排除されてしまいますが、ウイルスが排除されずに長期間感染が続く場合があり、ごく一部のケースで数年〜十数年かけて前がん病変の状態を経て子宮頸がんを発症します。ワクチンでHPV感染を防ぐとともに、子宮頸がん検診によって前がん病変を早期発見することで、子宮頸がんが予防できます。